君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】
「藤さんの中から僕を殺してしまったら、キスの事も覚えていないでしょ?」
「……バカだなあ、槙野くんは」
「バカって……、だって」
「今の私と、忘れてしまった後の私。どっちもファーストキスじゃん」
「そうだけど、なんていうか」
「……ファーストキスよりも、今の私の最後のキスが槙野くんって方が特別じゃないかな」
「最後の、キス」
ぽつりと独白するように呟いた槙野くん。
「ね、今の私にもそんな素敵な記念。くれてもいいでしょ?」
「藤さん」
「槙野くん、大好きだよ。
きっと、槙野くんを忘れても私はまた槙野くんを好きになるよ」
「……っ」
「足りない。伝えきれない。大好き、槙野くん、好きだよ、だいす――」
言葉を遮るように、槙野くんが私の顔を掴み唇を奪った。
触れるだけのキスで、一瞬だったけれど。
確かに、槙野くんが私にキスをしてくれたんだ。