君の中から僕が消えても僕は君を覚えている。【完結】

紗奈さんも前の旦那が亡くなってしまって、こうしないとバランスを取れなかったのかもしれない。
私もお母さんが亡くなった時は、泣いたと思う。
小さかったし、詳しくは覚えていないけど。


もしかしたら、ずっと私の事を疎ましく思っていたのかもしれない。
今となってはわからないけど。


彼女に壁を作られてしまってから、私は前みたいに笑いかける事がなくなっていたから。


千風に必要以上に接する事に躊躇してしまってからは、なるべく距離を置くようにしていた。
勉強するって言って自室に籠って、時間を潰した。


お父さんはほとんど家にいないし、早く帰宅しても千風にメロメロだったから。
それでよかった。紗奈さんと仲良かった時は。


本当の家族になったように感じていたから。


紗奈さんはお父さんがいると、普通に接してくる。
夕食の時は私に話しかけたりして、その様子は以前と全く変わらない。


きっと、これじゃあお父さんは気付かない。


でも、私が我慢する事でお父さんと千風が幸せならそれでいいのかなって思った。
私はここでは邪魔者だから、早く家を出よう。

大学行く時は寮のあるとこに入ろう。
それか、ルームシェアでも探すんだ。


この家に私の居場所はない。
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