にゃおん、とお出迎え

「そうだね。今の気持ちってこの空みたい。雲が晴れて、やっと遠くまで見えるようになった気がする」

「みゃー?」


お空みたいな気持ち?

まあ、晴れた空は元気そうだよね。
あたし、雨の日は元気出ないけど、晴れた日は元気出るもの。


「凄い、モカちゃん。ありがとう」

その子は目を潤ませてあたしを撫でる。

どういたしまして。
何をしたのかいまいちわからないんだけど、あなたがそういうならあたしってすごいのかな。


「奈々子ー。何してんのー!」


公園の入り口から、二人の女の子の声。

あ、いつもの三人組がそろっちゃった。また触られたら嫌だなぁ。


「モカちゃんと遊んでたの。二人ともそろばん終わったの?」

「終わったよー。一緒に遊ぼう?」

「わあい。モカちゃんに会えるなんてラッキー」


ひとり相手でも逃げれなかったのに、三人になられたら尚更逃げられないじゃないの。
案の定あたしは捕まって、背中を中心にナデナデされる。


「かわいー」

ありがとう。でも暑いのよ。

悪気がないのはわかるんだけどな。やっぱり小学生は苦手かも。
なんとか三人の手から逃げられたころには、毛並みがベタベタになってしまった。
帰ってじっくり舌でお手入れしなきゃ。

今日は何だか、あんまりいい日じゃなかったみたい。
でも、話は全然分からなかったんだけど、「ありがとう」って言われるのは、ちょっとだけいい気分。

そう考えると、ちょっとイヤだった時間も、良く思えるから不思議だよね。




【fin.】
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