ただあの子になりたくて


自分の恋敵に、塩を送るなんて、本当に報われない脇役。

胸がきりりと痛むけれど、私は大切に紙パックへストローを刺した。

一口、また一口と、前だけを向いて飲む。

また甘くて酸っぱい味がする。

隣は、首が固まったみたいに向けなかった。

沈黙の中、ストローの中を飲み物が絶えず上下する。

隣で胡坐を組みなおすのに、上履きが床にこすれる高い音がする。

私から何か話すなんてこと、できるわけがなかった。

昨日の朝のたった一通のメッセージ。

蒼介に初めてついた、汚い気持ちをたっぷり含んだ嘘。


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