ただあの子になりたくて
頬にくっつけられたレモンティーの紙パック。
極自然に隣に胡坐をかいて座り込む蒼介は、それを持って私に腕を突き出している。
戸惑いながらおずおずと手を伸ばす私。
「あり、がと……」
私は単純だ。
簡単に頬が熱くなる。
視界の端。右に見える黒板の脇。
壁にもたれかかって立つ拓斗が、歯を輝かせ、小さく親指を立てている。
私は複雑に微笑んで、蒼介から受け取った紙パックを抱き込んだ。
拓斗は素敵な馬鹿だと心底思った。