ただあの子になりたくて


「何言ってるか、わかってるのか? 何だよそれ。なずなは仲間だろ!」

蒼介の言葉は心の真ん中を掠めて過ぎ去っていく。

私は一直線に見つめてくる彼から、視線を外した。

彼からは見えない下にぶら下げた手は、いつも勇気に溢れた彼の泣き顔に酷く震えていた。

でも、言葉を飲み込んで口を堅く結ぶ。

本当は言ってしまいたかった。

私があなたとなりたかったのは、仲間ではなかったのだと。

ならばせめて、もうあんななずなのことはいいから、椿の姿をした私だけを見ていればいいのにと。

何度思ったかわからないことを、強く念じた。

「何でそんなことが言えるんだよ!」


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