ただあの子になりたくて
「おい、そんなんでどこ行くんだよ! 待てよ!」
顔を歪める。
痛い。
拓斗の指が私の腕に食い込む。
私はなりふり構わず暴れてもがく。
「らしくねえよ! 冷静になれよ! あんな言い方ないだろ!」
「らしいって何よ! そう思ったから言ったの! それの何が悪いの!」
苛立つままに渾身の力をこめて振りほどくと、私は拓斗に真正面から顔を突き合わせて、一息にまくしたてた。
すると拓斗は、この椿の顔にも躊躇せず、激しく顔を歪めて叫んだ。
「俺だってあの日からずっと悔やんできた! なずなに会った最後のあの日、アイツ泣いてたんだ。泣きながら逃げてったんだ。それからいくらふざけて過ごそうとしても、あの泣き顔を何度も何度も夢に見た」