ただあの子になりたくて


もういい、彼はそう言った。

好きにしろよ、そう言って彼は椿である私の前を去った。

「ああああっ!」

私は顔を覆い叫ぶ。

目の前が真っ暗になる。

全部おしまいだ。

止めどない涙が手の内に溢れかえる。

椿になっても水の泡。

所詮は私。

彼には絶対、愛されない運命。

私は踵を返し走り出す。


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