ただあの子になりたくて


海よりも上の人間の世界に夢見る人魚姫。

地味な自分とは正反対なキラキラした友達を見て、羨ましいと思った遠き日の私。

演じているのに、演じている気がしない。

練習の時からそうだった。

私は人魚姫のように美しくはないけれど、していることはほとんど同じ。

自分の本当の気持ちが台詞に乗っていく。

今度は上手から続々と現れる、煌びやかな衣装に身を包んだ人たち。

その中でただ一人、熱いライトを浴びる純白の王子様。

はにかんだ笑顔がかわいい彼。

ライトなんかなくても私には彼だけが特別輝いて見える。


< 276 / 318 >

この作品をシェア

pagetop