ただあの子になりたくて
観客席はほとんど闇に包まれて、ステージの上にだけ燦然と輝くスポットライトがあたる。
集まった大勢の人々はそろって口をつぐみ、私たちのステージのためだけに音楽が溢れる。
クラスのみんなが作った色とりどりサンゴの飾りが輝いている。
不思議と緊張はしなかった。
手を開いて腕を伸ばせば、まるで光に直接触れているようにスポットライトはやさしくあたたかい。
ステージは、ありのままの私を受け入れてくれる。
私は自信を持てる。
練習が染みついた体は、音楽に合わせて、一緒に演じるクラスメイト達に合わせて自然と動く。
「ああ、人間の世界ってどんなに素敵なのかしら」
天へと向かって手をこれでもかと伸ばし、私はうっとりと焦がれる。