ただあの子になりたくて
こんな時まで余所行きの声。
私は息を潜め二人の背後の陰に入った。
その瞬間、ドアが開かれ、出てきたその人は、目を見開いた。
「蒼介くん、拓斗くん……椿ちゃんまで。……どうして?」
私は鳥肌が立つのを我慢しながら、その人にぎこちなく会釈した。
消えた眉間のしわ。私とよく似た嫌いなたれ目。
他人にはいい顔を向ける。
私のお母さんがそこには立っていた。
今は他人だけれど。
「友達に聞いてきました。なずなは、なずなは大丈夫なんですか⁉」
蒼介は前のめりで勢い込んで、お母さんを問いただす。