ひと冬の想い出 SNOW
「うん、おはよ。」


時々つぶったり、首をかっくんとしたり…小鳥遊さんは寝ぼけている。


朝ごはんを食べれば元に戻るものの、小鳥遊さんはとてつもなく朝が弱い。


それに気がついたのも、私が小鳥遊さんより早起きするようになった頃から。


わたしも朝は弱いんだけど、幽霊になってからというもの、普通に起きられる湯やうになっていた。


自分の苦手なことぐらい言えばいいものを。


小鳥遊さんは少し頑固なところがある。


私は朝ごはんを(というかご飯は)食べないため、キッチンへ向かう。


コーヒーを入れるためにね。


小鳥遊さんは、牛乳とコーヒーの割合を5:3にした、少し甘めのカフェオレ(?)てきな飲み物が一番好きみたい。


一番お気に入りのクローバーの柄のカップに注ぐ。


「遅くなってすみません。」


小鳥遊さんの前に置く。


「…ありがとう。」


やっと目が覚めたみたい。


私の目を見て笑顔でお礼を言ってくれる。


「いいえ。これが私の仕事ですから。」


ふと窓の外を見る。


今日は雨が降っていた。


そうだ、傘を出さなくちゃ。


「シャワー室に干しておけばいいからね?」


玄関に向かおうとした私は小鳥遊さんの声で引き止められる。


「は〜い!」


私は歩きながら返事をする。


玄関の脇にある物置のような場所から紺色の傘を取り出す。


「お、気が効くね。」


後ろから身支度を整えてやってきた小鳥遊さん。


私は脇によけて、車のキーと傘を持つ。


小鳥遊さんが靴を履き終わり振り返る。


「帰りは雷がなるらしいですから、気をつけてくださいね?」


わたしながら付け足す。


今日は豪雨になるらしい。


「わかったよ。いってきます。」


「いってらっしゃい。」


最近は、小鳥遊さんの方からいってきますを言ってくれるようになった。


わたしはそれが、とても嬉しかった。
< 18 / 23 >

この作品をシェア

pagetop