ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
色合いが自分の着てる浴衣みたいだと思った。
あの金魚が掬えたら自分も幾らか救われるような気がする。


ポイの先端を水に浸けて寄ってくるのを待った。
向かってくる金魚の下にコーンを滑り込ませ、(掬った!)と思ったのにーーー



「ポチャッ!」


コーンが柔らかくなり過ぎて落っこちた。
だらん…と垂れ下がったコーンを眺め、「何よ。これ」と呟く。


「ちょっと!詐欺なんじゃないの!?このポイの柔らかさ!」


水に浸けてたくらいでこんなに柔らかくなるもの!?

ジロッと男を睨むと、サングラスの向こうから睨み返された。


「言いがかりは止せよ。こっちは全う勝負しかしてねぇ!」


一々ドスを利かせる言い方。

テキ屋が怖い人だなんて知らないもんだから同じように睨み返して言った。


「次のをちょうだい!」


差し出されたポイを引ったくって握った。

今度は早くから水に浸けず、
狙った魚の後ろから追いかけたけど……




「……また失敗…」


何くそ…と、次々にポイを無駄にしながら挑んだ。

私が狙ってる金魚は動きが素早くて、どうしてもポイの上には乗ってくれない。

スイスイと自由自在に泳いで、最後には全く寄ってこなくなった。



「いい加減止めとけよ」


呆れ顔で言い渡された。


「もっと動きの鈍いヤツにしとけば?そこら辺の出目金とか小金とか」


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