ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
ドレスよりも着物の方が似合うよ…って言われた。


「おばあちゃん思いなんだな、ケイは」


優しい目をして言われてもーーー。


「だ、だって、あの着物はおばあちゃんが作ってくれたもので……」


着物屋さんに行って一生懸命選んでくれた。
そうまでしてくれなくても良かったのに、気持ちがスゴく有難くて……


「一生に一度しか袖を通さないのもいけない気がして、もう一度くらいは着ようかと思っただけ…なんです……」


おばあちゃん思いなわけじゃない。
ただ、何となく勿体ない気持ちが働いた。



「よく似合ってたよ」


そんな一言で気持ちを掬う。


「今夜の浴衣と同じだな」


次第に胸が苦しくなってくる。
この人は私の気持ちを簡単にくすぐってしまう。


「さっき駅前でケイを見つけた時、兄貴の結婚式の時と同じだと思った。柔らかい雰囲気で可愛いくて」


「そ……」


それは気のせいです!!


「ハデな服も綺麗に見えてはいたけど、俺は今みたいな方がいい」


「あ、あの……」


それ以上褒めても何も出ないから!


「さっき、羅門も唖然としてたろ」


「えっ…」


「ハデなホタルとは別人に見えてたぞ、きっと」


それは悪い意味でギャップがあるってことよね?


「この間あいつのレストランに連れてった後、俺、散々からかわれたからな」


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