ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
検品課へ続く階段を下りてる最中、短い着信音が鳴った。
ベストのポケットから取り出したスマホにメッセージライトが点滅してる。

誰から…と思いながら画面をタップしてみると、思いがけず轟さんからで。


『異動したんだって?』


最上階から送られてきたメッセージにドキドキしながら文字を打ち返す。


『はい。いきなり過ぎて、天罰下ったのかと思いました』


丁寧語で話さなくてもいいと言われた。
でも、それもまだ難しくて治せない。


『やれそう?』


心配してくれてたのか。


『頑張ってみます』


ぎゅっと握りしめて送った。
メッセージが戻らないから忙しくなったのかと思って歩きだしたら、ピコン!と短い着信音が鳴ったんだよ。



『……がんばれ』


開いた画面に映る三点リーダーを見やった。
あれこれ悩みながら打ち返してきたから、こんなカタチになったのかと思った。



『はい…』


胸がいっぱいになりながら、それ以上の言葉は打ち込めなかった。
何の文字もスタンプすらも、その後は送られてこなかったけど……



(ありがとう……大輔さん……)


応援してくれる人がいると思うだけで幸せ。
上司とオフィスラブなんて私には一生縁もないと思ってたのにーー。



気持ちを噛みしめて検品課のドアを開けた。
入社して4年、ほぼ休みもせず通い続けた部屋だ。



「おお、お世話になりました…」


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