ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
(だから責任者をしてるのかな)


楽しそうにしてる横顔を眺めて思った。

気張らなくてもいい雰囲気がここにはある。
気楽でざっくばらんで、パラダイスみたいな場所。


(…あっ、もしかして週末家に居ないっていうのは、この集まりに参加してるから?)


急に気づいた。
頭の中に立ち込めてた雲が、スーッと晴れてく。


(そう言えば私、今週真綾達と何の話をしたっけ?)


話し込んでる人達を見ながら思いだした。
この1週間、気ばかりを張り詰めてたせいだろうか、真綾の話も聖の話も、疎かに聞いてた気がする。


(こんな調子だから、おばあちゃんにも変だと思われるんだ……)


駅での態度もおかしいって怒鳴られた。
何よ!と思ったけど、私には轟さんの思いが伝わってなかっただけかもしれない。


(そうだとしたら……ごめんなさい。大輔さん……)



副社長として会ったことないと言ってたのに、私は今日も副社長と会ってるような気がしてた。
がんじがらめにしてた。
副社長の彼の隣に立てる自分になろうとしてばかりで……。




「ねぇ?」


純香さんがブラウスの袖を引っ張る。


「ちょっと一緒に話さない?」


女子は私達だけなんだしさ…と誘われた。


「えっ、あ、あの……でも……」


チラッと横目で伺う。

お祭りの話で盛り上がってる彼は、私のことなど気にもしてない。


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