ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
ドアを閉めると純香さんは眩しそうに空を仰いだ。


「あっついわねー」


胸元に差したサングラスを取り出して掛ける。
表情が分からなくなったけど、その方が私には有難い。



「ーー本当に大ちゃんの彼女なの？」


いきなり黒いサングラスを掛けた人が振り返った。


「どう見ても付き合い浅そうな感じだけど続く？」


轟さんのヒミツを知りたくないかと言ってたはずなのに違うことを言い出す。
私と彼の付き合いがどうなるかなんて、この人には関係ないはずだ。



「か、関係ないと…お、思います…けど…」


ムッとして睨んでしまった。
向こうには私の表情が丸分かりなのに。


「そんなに怒んないでよ。私は単に大ちゃんのことが心配なだけなんだから」



（そうよね、元カノだもんね）


視線を逸らして思う。
思っても口に出せないところが悔しい。



「私、大ちゃんの幼馴染なんだ。だから、いろいろと見てきてるせいでさ」

「えっ……」


改めて純夏さんの顔を見た。
黒いサンドレスを着た人は、店の壁に凭れて喋った。


「大ちゃん家はいろいろあって複雑でさ。今でこそお金持ちで落ち着いた生活してるけど、いつも怒鳴り声が響くような家庭で育ったし…」


ポケットに手を突っ込むとタバコとライターを取り出した。
慣れた手つきで口に咥え、火を点けてから煙を吐いた。



「…聞いてる？大ちゃんのお父さんのこと」


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