ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
人差し指と中指でタバコを挟んだ人から聞かれた。
先週末に聞かされたばかりの話を思い出しながら勿体ぶって答えた。


「えっ……と、はい、一応……」


タバコを吸い込み、煙を吐き出した純香さんは「ふ〜ん」と声を漏らした。



「話したんだ。これまでは誰にも話したことなんて無いのに」


アル中で借金抱えたまま逃げたお父さんがいるなんて、気安くは言えないことだけど……



「じゃあ本当は轟さんの養子になりたくなかったっていうのは?」


「ま…迷ったとは、聞いてます、けど……」


会長に説得された様な言い方をしてた。
でも、それは轟さんの本意ではなかったのかもしれない。


「迷ったんじゃないのよ。なりたくなかったの。大ちゃん自身のやりたい事がやれなくなる可能性が強かったから」


キッパリ言うと、ポケットからケータイ灰皿を取り出して吸殻を押し付けた。



「…やりたいコト?」


伺うように聞き返すと、純香さんは「あら」と声を発した。


「それは聞かされてないの?」


焦らすように笑い、「そうねぇ…」と口にした。


「今更言っても仕方ないから諦めてるのかもね。企業の副社長の方が断然安泰だもんね」


意味深なことを言って微笑む。

ヒミツというのはそれのことなんだろうか。


「な…何ですか?……その、やりたかったコトって……」


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