ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
「だ、だからぁ」

「ああ、わかった。渡すって言った物な。後ろの座席に置いてるだろ」


左手の親指が指す方向を見ると、後部座席のシートの上にピンク色のリボンが掛けられた包装バッグが転がってる。



「……何、あれ」


振り返って聞いた。


「見送った後見つけたんだ。あんたのじゃないかなぁと思って取っといた。それより、どこ行きたい?」


「どどど、どこと言われても、きゅきゅ、急にはそんな……」


そんなつもりで来てないし。
むしろさっきの場所へ連れて帰って欲しいんだけど。


「プッ!あんたの吃り、面白いっ!」


コラコラ。
そこは笑いどころじゃないんだって!


「行きたい所ないなら黙って座ってろ。いい場所に連れてってやるから」


だから、それは嫌なんだって。
降ろして欲しいの、私は。



「ああ、あの…!」


あーーん、外見だけ別人になってもムダか。
私はやっぱり話すのは苦手だぁーー!



「あの?」


聞き返さないでよ。
余計に緊張するっ!



「もも、もう、いい」


話すのやめる。
バカバカしくなってきた。


「いいのか?変なヤツだな」


サングラスをかけた谷口は笑ってる。
横顔しか見えてないけど、確かに鼻筋は通ってる。
それから……


(あっ、まつ毛が長い……)


レンズに擦れ擦れ。
瞬きする度に当たってそう。


(それから耳も大きい)


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