ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
髪の毛を逆立ててるせいかな。縦に長く見える。


(やっぱりイケメンそう?どう?)


なんとか正面から顔が見たい。
ついでに言うと、サングラスを外して欲しい。


覗き込むような体勢をしていたからか、谷口の顔がこっちを向いた。


「なんだ。あんまマジマジ見んなよ」


「ご、ごめん!…なさい」


身を縮めて前を向いた。
交通量の少ない道路は、スイスイと流れてる。



(ホントにどこへ行くつもりなんだろう)


私はビーサンを届けに来ただけなのに、どうしてこの男の車に乗せられてる!?



(えーん、これじゃ龍宮に連れて行かれるウラシマと同じ!)



どうか、変な場所じゃありませんように。
特別待遇を受けなくてもいいから、無事に家に帰れますように。


祈りながら車に揺られた。
連れて行かれた先で、私は初めて谷口の素顔を見た。




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