ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
一瞬だけ昨夜のことが頭を過ぎった。
でも、すぐに雑念を払って黙々と仕事を進める。

お昼になってLINEを開くと聖から連絡がきてて。



『お昼一緒に食べよう!』


オフィス内のカフェテリアで待つとある。


『すぐに行く!』


オッケーのスタンプを押して部署の外へ出ると……



「ケイちゃん…」


ドアの向こうにいたのは、先々週こっぴどく私をフッた相手で。



「何しに来たの」


あんたは営業部の人でしょ。


プイと顔を見ずに退けた。
なのに、郁弥はその進路を阻んできた。


「何よ!どいて!」


あんたに傷つけられたこと忘れてなんかない。
残ってるのは怒りだけ。
それももう忘れてたのに。


「話がある」


こっちにはないって。


「知らない。話なんてないから!」


前を避けて逃げ出そうとすると、ぎゅっと手首を掴まれた。


「イタッ!離して!」


振り解こうとするのに、頑として離さない。


「俺のこと上司にチクっただろう」

「何のことよ!」


因縁をつけてくる相手を睨んだ。

変な言いがかり言ってくるのは止して。
バカにするのもいい加減にして。


腕を捻るようにして振り解く。
ヒリヒリする右手首を左手の平でカバーした。


「今日来たら人事移動が出されてた。地方支社へ行けって」

「そ、それがどうしたのよ」


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