ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
翌日のお昼、ランチを食べながら怒る友人二人を前にしていた。


「郁弥って男、アホなんじゃない!?」

「本当。気にすることないよ、蛍」


「……うん。ありがとう」


昨日あったことを話して聞かせた。
怒りはとっくにピークを過ぎてたけど、やっぱり少しムカついてたから。


「それにしても副社長の判断っていうのが不思議ね」


聖がそう言いながら真綾の方に目を向ける。


「人事について口を出すなんて初めてなんじゃない?」


「そんなことないわよ。たまには聞くわよ」


真綾も記憶を辿りながら話す。


「ケイ、副社長と知り合いなの?」


聖の視線が私の方へ向いた。


「な、なんで!? 私、副社長の顔すら忘れてるよ!」


真綾の結婚披露宴で会ったのが最後。
それも大分前の話。


「そっかー、そうだよね」

「そうそう。絶対に知らないから」


知ってても話す勇気なんてあるわけがない。


「あっ、そう言えば副社長ったらね……」


思い出したように真綾が笑う。


「金魚に名前付けてるみたいなの」


「あのどんぶりで飼い始めたっていう?」

「何て名前?」


「それが絶対にヒミツらしくて。私達がいる前じゃ決して呼んだりしないのよ」


真綾の話から、どんぶりで飼われてる金魚は出目金だと判明した。
白地に赤と黒が混じった珍しい種類で、キャリコとも言うらしい。



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