ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
取り敢えず神様だけはお参りして帰ろう。
次こそは必ずステキな彼に会えるよう、大枚叩いてお願いするんだ。



(1万円使ってやる!!)


決意して顔を上げると、左の道端から声をかけられた。



「そこのキレイなオネエちゃん、金魚すくいしていかない?」


少々高めな男性の声を気づき、(誰のことを言ってるんだ…)と思ったけど無視した。



「ねえ、そこの派手な浴衣着たオネエちゃん!」


「派手」という言葉にムッとする。

どうせ自分のことじゃないや…と決めつけ、知らん顔しながら通り過ぎようとした。



「おいっ、あんたのことだよ!」



ぐいっと肘を引っ張られた。
驚きと同時に湧き上がった怒りで、キッと後ろを振り返った。



「ほっといてっ!金魚すくいなんてやる心境じゃないんだから!!」


我慢していた怒りが溢れて怒鳴った。
大きい声を聞いて、相手の方が仰け反る。


「放してよ!」


腕を振り解こうとしても、ちっともビクともしない。
大きな掌で掴んでいる男は、そんな私にこう言った。


「そう言わず折角だから掬っていきなよ。今なら可愛い金魚がいっぱい揃ってるから!」


「する気になれないって言ったでしょ!」


放して…!と言いながらも連れて行かれる。
放されたら真っ先に逃げようと努力しながら、パラソルの下までやって来た。



「ほら。どうぞ」


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