ヤンキー上司との恋はお祭りの夜に
特技も何もない人間。
光らない昼間のホタルみたいなもん。


「はは。空し…」


肩を下げて課へ向かった。
引きずるように滑らせる足取りは重くて、気持ちまでも一層沈んだ。


月曜日も火曜日も谷口からは何も送られてこなかった。
これまでは大抵一言くらいメールを送ってきてたのに。



(これってまた失恋する前触れ?)


いらない心配をしてしまう。
連絡がないことがこんなにも不安になるなんて。


(だったら自分から送ればいいんだ)


何を…と迷う。
そう言えば私から送ったのは、この間の『会えない?』が初めてだった。


(あれも相当緊張して送ったのに、今度は何て言って送るのよ)


谷口みたいに『元気か?』って?
子供じゃないんだからそんなの聞く必要もない。


(土曜日楽しみにしてるって送る?)


遠足待ちの小学生みたいで笑われない?
ホタルは子供みたいだなって谷口ならバカにするかも。


(やっぱりもういいや)


勇気を出すよりも悩んでる方が私らしい気がしてきた。
これがホントの自分だもん。変に飾ったって仕方ない。


ノックアウトされるのなら郁也の時で慣れてる。
谷口が私を選ばなかったら、縁は無かったってことだ。


(仕方ないじゃん。そういうこともアリだよ……)


いじけてるんじゃない。
腹をくくるっていうんだ、これは。


(うん!絶対にそうだから!)


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