竜宮城に帰りたい。



昨日の夜、結局おばあちゃん家のタンスから浴衣は発掘された。


晴が着ろと言ってくれた浴衣。


別にその言葉以上の何か意味があるとは思っていないけれど。



ゆかりを起こし、おばあちゃんに今日の予定を話して私たちは外に出る。


「ゆかり、おばあちゃんも町内会の手伝いですぐにお祭り会場に来るってさ。」

「そうなんだ!じゃあ会場で会えるんだね。」

「うん。」

「あっ!おはよ、晴おにいちゃん。」

玄関を出たところにちょうど晴が立っていて、ゆかりはためらうことなく挨拶をした。


「はよ、ゆかり。」


「……」


挨拶、するべき?

でも…


私が迷っている内に
「よっしゃ、行くかー」
と、祐くんが号令をかけ、晴を先頭に歩き始めてしまった。



これじゃあ、変わる前の私と同じだ…。


言いたいことを飲み込んでしまう…。



「……」



それでも私の口は動かなかった。





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