竜宮城に帰りたい。



「私たち部活の先輩に用事があったんだ!
気遣ってくれてありがとう!!」



「やった方がいいよね?」って、
「みんなで」っていう意味だったのに…


二人の笑顔は曇りなく、
感謝の言葉が純粋なことは簡単に分かった。


なんか…今さら訂正するのも…



「…ううん。全然良いよ!」


「ありがとう!
澪ちゃんって本当に優しいよね!」


ズキッ…



「……部活がんばってね。バイバイ!」


「また明日~!」
「バイバ~イ」



二人は急ぐように小走りで教室を出ていった。


ほとんどみんなが帰った教室で、
一人手にホウキを取る。



目に涙が込み上げそうになるのを必死に抑え込む。



これっていったい誰が悪かったの?

はっきり言えなかった私?

勘違いしたあの二人?

当番に気づかずに帰った男子?




「私優しくなんてないよ…」



呟いたその言葉は誰に届くこともなく消えていった。




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