竜宮城に帰りたい。



「よっしゃー!
気張って登んで〜」

「お、おー!」
「おねえちゃん、早くー」


祐くんの後に続いて山道を登っていると、
だんだん息が上がってきた。

情けない…

祐くんはちょっとした丘って言ってたのに…


「おねえちゃん、もう疲れたの?」

「ゆかりは元気だね…」

「だって毎日みんなと鬼ごっこしてるも〜ん」


そう言うと、スタスタと山道を登って行ってしまった。

わ、若い…



「おい、ババア。
後ろつっかえとるんや。はよ歩きまい。」


っ…!

晴!

今日久々に私に話しかけてきた会話がこれって…

いや、ある意味期待を裏切らない悪態だけどね。


「そ、そんなこと言っても…
辛い〜」

「お前、ほんまに女子高生な?
瑞季やこし、ゆかりみたいにピョンピョン登るんやで。」

「え、瑞季ちゃんが…?」


み、瑞季ちゃんに負けたくない!


「ほんだら、やる気出る情報。
頂上からの景色、ごじゃ綺麗やぞ。」

「え、ホント!?」

「ああ。」


ドキッ…

不意打ちだ。

なんでそんな優しい顔で笑うんだ…。


「この山の名前、紫雲出山やろ?
その雲って、玉手箱の煙げなで。」

「玉手箱…」

「そ。」

「…っ、よっしゃ!
が、頑張る!頂上の景色見る。」

「ハハッ
頑張れ、ババア。もうちょいや。」


玉手箱の煙…

あの夜の海で話した、

乙姫の呪い…




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