竜宮城に帰りたい。
十数分後、少し息が切れたが、
なんとか頂上にたどり着くことができた。
「ぅ、わぁ~!
ホントにキレイ!
海に囲まれてる…。すごい…」
「せやろ。晴れとってよかったのぉ」
「うん…」
しばらく景色に見とれていたが、
ゆかりが飽き始めて、あっという間に下山することになった。
まだ昼前なのに解散か…。
少し残念に思っていると、
いつの間にか晴が私のとなりを歩いていることに気がついた。
こ、これって…
なんか話しかけた方がいいよね。
でも…何を?
明日のこととか…?
えっとー…「なぁ、澪」
「っは、はい!!」
「なに焦っとんじゃ、アホやのぉ」
「は、はい…」
どうしよう…。
私、今まで晴とどういう風に話していたんだっけ…
どうしても意識せずにいられない。
だって今…
瑞季ちゃんがいないんだよ…?
「ね、ねぇ、晴?」
「あ?」
晴はぶっきらぼうに答えるけれど、
そんなに嫌そうではない。
今日は機嫌がいいんだな。
瑞季ちゃんがいないのに…
って、無駄な期待はやめやめ!!
「覚えてる…?
夜の海で…話した玉手箱のこと。」
「覚えちょる。」
晴は真っ黒い海を思い出すように、
あの時とおんなじ真っ黒の瞳で遠くを見据えた。