竜宮城に帰りたい。



「っ、晴…
ありがとう。」


別れ際、晴にそう告げると、
見たことがないくらい優しく笑った。



きっとこの笑顔、瑞季ちゃんは何度も見てるんだろうな。


嫉妬と言うより羨ましい。



昨日、晴が私を浦島太郎に似ていると言っていたことを思い出し、鼓動が速まる。


少しでも晴のなかで私が主人公になったのかと思うと、
それだけで声をあげたいほど嬉しかった。



早く晴れないかな…


どんよりした空を見上げてそう願う。


晴れていないと、きっとただでさえ海底にあって暗い竜宮城がさらに暗くなってしまう。



乙姫様が寂しくならないよう、
明るくなくちゃ。

明るければ、浦島太郎も会いに行ける。




「ただいま…」


「おばあちゃん!!おねえちゃん帰ってきた!」

「澪ちゃん!心配したんやで!
びちょびちょやないの!」



大丈夫。

私の周りは十分晴れているから。








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