愛と音の花束を
コンマスは楽しそうにうなづいていたけど、他のパートに呼ばれて私達の元を離れていった。
それを機に私も離れようとすると、椎名が言った。


「後ろから見る結花ちゃんもカッコよかったよ」


「……は?」

「あ、いえ、後ろから拝見する永野さんも素敵でした」

いや、タメ口を咎めたのではなく、純粋に言っている意味が分からなかったんだけど。

「結花ちゃん、ここは行くよ!って時にはスイッチ入るでしょ? 客席からステージ見ててかっこいいなぁって思ってたんだ。今日後ろから見てもやっぱりかっこよくて、ついていく気になりました」

「…………」

……リアクションに困る。

「あはっ、褒めてるんだから、ありがとうって笑えばいいんだよ」

「…………」

「あ。褒めてるので、受け入れてくだされば結構です」

「……それは、どうも」

棒読みで答える私を見て、椎名は嬉しそうに笑った。

何なの。
ほんと、困る、この男。






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