カナリア
「文太君、遊園地、行きなれてる?」


実はちょっとだけ気になっていたことを聞いてみる。


「慣れてないよ。」


「そうなの?ぐだぐだしながら周るのも面白いけど、スムーズで快適だよ。」


「事前に調べたら有る程度、分かるでしょ。」


「へー……。遊園地が趣味かと思った。」


「どんな趣味。」


「ほら、有名な遊園地だと沢山リピーター居るじゃない。」


「じゃあ遊園地、趣味にしようかなぁ。」


趣味か……私は映画鑑賞とか料理とか……あと運動も好きだなあ。まあ特に変わったものではないけど。


「おれさー。物心ついた頃には勉強勉強で趣味持ってないんだよな。」


「確かに、文太君の学科、偏差値高いよね。浪人生多いし。

勉強が趣味でいいんじゃない?」


「えーそれも発展性ないなー。なんか趣味作ろうかなーとか思ったりするんだけど。正直、難しいよね。」


「…………。」


「なんで、黙るの。」


「えっと……返しに困ったというか……」


「カナのそういう正直な所いいよね。」


「趣味なんて、無理して見つけるものじゃ、ないんじゃない?今まで通り、勉強一筋の方が文太君らしいよ。」


「ガリ勉かぁ~~~……。趣味、単位取りじゃん~~。」


「羨ましい。あ、ホラホラ、パレード始まるよ。」




最後は観覧車で締めようと言ったはいいが、これは安直だったかもしれない。


観覧車から夕日を眺めてロマンチックに過ごそうとしているカップル達の多さに文太君共々引いた。


しかし、高いところが好きなのと、最後に取って楽しみにしていた物を今更諦めきれない。文太君に無理言って並んでもらった。





一日中遊んで、文太君と私は家路に着いていた。


「そういや今日一日よかったの?」


「カナこそ、大丈夫だった?」


「うん、私は大丈夫。……今日って……岡目君バイトじゃなかった?」


「休んでもらって、留守番。」


「わ、悪いことさせちゃったかな……。」


「大丈夫大丈夫。こっちで埋め合わせするから。あんたが心配する事ないだろ。」


「た、確かに……。」


「…………。

……今日さ、おれも楽しかったよ。あんまりこういう息抜きしてなかった。」



「……文太君。」



「あんたとなら、また来てもいいかなって思った。」



伏せ目がちに思考する時の表情は妙に大人っぽい。髪の毛の先を、ひっぱる癖がある。


口は悪いがガサツなわけではない。むしろ神経質な部類にはいる。


優しくはないが細やかな気配りはできる。


そして悪戯っぽく笑う時はやけに子供っぽい。


アンバランスだなと思う。




「夜が夕日食べてる。」


「綺麗だねー。」


先ほどまで赤色だった空の半分が夜へ塗り替えが始まっていた。


まぶしそうに目を細める文太君の表情は険しかった。


「ねえ、これってキスした方がいいの?」


「そういう心積もりで乗ったわけじゃないので、お気遣いなく!!!!!」
< 23 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop