なにもない
空白になる前

〜なにもなくなる前〜

僕の部屋は
白い壁、白い家具、ただ白を基調にしていた。

僕は白が好きだ。

白は穢れの無い唯一無二の色。
何色にも染まり、また何色にも染められない色。

そう考えていた。

だが一つだけ、
白い世界の中に薔薇が咲くようにある赤い椅子。

買った覚えはない。
そしてもらった覚えもない。

赤はそこまで好きではない。

だが、この白い世界の中に一つある赤い椅子を、
その空間をとても美しいものだと、
僕は確信にも近い納得を得た。

赤は白を映えさせ、白は赤を映えさせる。



< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop