桜の花びら、舞い降りた
妹の美由紀さんと橋から飛び降りない現実へ移り行く過程で、なんらかの歪みが生じたのかも。
私たちが支障なく普通に選択する場面で、圭吾さんにはたまたまひずみが起こった。
タイムマシンがない以上、そう考えるしかなさそうだった。
「ね、亜子、圭吾さんだっけ? 私もその人に会いたい」
「え?」
「学校が終わったら行くつもりなんでしょ?」
「まぁ、そうだけど……」
私が連れて行ってしまった以上、俊さんとどうしているか気になるし。
「心理学を専攻していく上で、パラレルワールドの存在ってなかなか興味深いんだよね」
圭吾さんに対する香織の興味が一気に深まってしまったようだ。
「いいでしょ?」
疑問形で聞いておきながら、そこには断らせるつもりはいっさいないという強さを秘めている。
断る理由も、私にはない。
帰りにアトリエに行く約束を香織と交わし、サンドイッチを頬張った。