桜の花びら、舞い降りた

その言葉に安心した。
一瞬、元の時代へ帰ってしまったのかと思ったからだ。

雪は止んでいるとはいえ、昨日振った影響で森の中は深い雪に覆われている。
道に迷ったりしないだろうか。
つい心配になる。
圭吾さんにとっては、まったく未知の世界なのだから。


「心配しなくても、すぐ帰ってくるよ」


俊さんは絵筆を置き、私の心を読み取ったように言った。
そしてその言葉の通り、それから数分経った頃、圭吾さんはここへ戻って来た。


「学校帰り?」


ブレザーの制服姿の私を見て微笑んだあと、香織を見つけて軽く会釈した。


「亜子の友達の香織です。こんにちは」

「こんにちは」


圭吾さんが香織に挨拶を返す。


「どこに行ってたの?」

「あぁ……ちょっと人探し」


私の質問に目を逸らしながら答えた。
それはもしかしたら……。

< 52 / 207 >

この作品をシェア

pagetop