桜の花びら、舞い降りた
「妹の美由紀さん?」
圭吾さんの視線が一瞬で私へ舞い戻る。
少し困ったような表情で俯きながら、「うん」と言った。
一緒に飛び降りたはずの彼女の姿は、こっちの世界に来たときからないのだ。
心配になって当然。
圭吾さんひとりだけが別次元に来てしまったのか。
美由紀さんはいったいどこへ行ってしまったんだろう。
なんの手がかりもない。
「寒かっただろ。これ飲んで温まるといい」
俊さんは紅茶を四つ淹れてきてくれた。
私と香織が来たときにはそんな素振りも見せなかったのにという不満は、こぼさずに我慢した。
昨夜のように『引き受けたのは圭吾くんの面倒であって、亜子じゃない』と言われるのがオチだからだ。
私と香織の分を一緒に淹れてくれただけでもありがたいと思うことにした。
私たちに構わず水彩画を続行する俊さんを尻目に、私たちは紅茶をすする。
「圭吾さんは何歳ですか?」
唐突に香織が質問をする。
そういえば聞いていなかったっけ。
「二十歳」
「それじゃ私たちより三つ年上だ」