未完成恋愛
「岡崎…先生は病気だったって聞いた」

「そうよ。手術もしたんだけど…ガンが全身に転移してね。随分頑張ったんだけど、年齢が若いからね…最後は可哀想だったわ…」


「何か…言ってた?」

「ん?」

「オレの事…」

「…付き合ってたんですってね?」

「そのせいで…オレのせいで学校辞めたんだと思ってた。最期に会った時、結婚するんだって言ってた。オレずっとフラれたんだと思ってた」


「違うわ…岡崎先生はね、キミに看取らせるのは残酷だって思ってたのよ。もう…長くないってわかってたのね。あんな最期を一緒に過ごすのは…大人でも…キツイから」


死にゆく自分の姿を愛する人に見せたくない

彼女はそう思った?

例えばオレが死ぬ時…そう言って周りの人を拒絶したら…

…オレが思ったように、オレの周りの人も同じ事思うんじゃないかな


『それでも最期まで一緒にいたいよ』


…って。


「…オレ…彼女の事がホントに好きだったんだ…ぅ…っ…っく…岡崎…ぃ…っ…」


初めてオレは泣いた。

悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて悔しくて…涙が止まらない。


例え死ぬんだとしてもオレは



『一緒に過ごしたかったんだ…』
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