きみのおと

溢れだす感情



「待って、しぃちゃん!」



ひたすらに走っていた。
恥ずかしくて、悲しくて、心がごちゃごちゃして。


そんな私を、千秋くんが追ってきて叫ぶ。
その声に、私はようやく立ち止まった。

追いかけてくれた。
その事実が、無性にうれしくて。



自分の感情が、ぐちゃぐちゃだ。
悲しくなったり喜んだり。




「しぃちゃん・・・。ごめん、泣かせちゃったの、僕のせい・・・だよね?」



言い辛そうに千秋くんが言う。
私は振り向けずに、背中で千秋くんの声を聴く。



「・・・違う、千秋くんのせいじゃ・・・」

「でも。今日は二人がいいって言ってたのに、僕がちゃんと断れなかったから」




千秋くんも気づいてたんだ。
私が何に傷ついてたのか。




「ごめん・・・。ちゃんと断ろうって思ってたのに、うまく言えなくて・・・」

「千秋くんが優しいの、私知ってるから。仕方ないよ・・・」





そう。仕方ない。
そう言う優しさを、私は好きになった。



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