きみのおと
voice 8

なぜ



僕は弱くて、ずるい。
いつだって護られてばかりで、逃げてばかり。



本当は僕だって、大好きな人や大切な人を護りたい。
でも現実はいつだって。

僕は守られて。
大好きな人を護るのはいつだって僕以外の誰か。


それなのに、僕は。
護られるどころか、傷つけて泣かせて。



大切な人一人もろくに護らない。



過去にとらわれ、自分の殻に逃げてしまう弱い僕なんて。




きっともう、彼女にはふさわしくないから。




「すげー騒ぎになってるぞ!」



移動教室の教室にバタバタと入ってきたクラスメイトが叫んだ。
何かがあったんだろうか。



「騒がしいね、なんだろう?」



そばにいた亜衣ちゃんが怪訝な顔で僕を見た。
亜衣ちゃんは、しぃちゃんに別れを告げてからも僕を気にしてくれている。
最初は反応もできずにいた僕だけど、亜衣ちゃんたちが声をかけてくれることで心が少し軽くなった。

本当は僕なんて放っておいてくれていいって言わないといけないのに。



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