風便り〜大切なあなたへ〜
日がだんだんと暮れ、どこまでも青かった空が、夕焼けに染まった。
「お前、帰らねえのか?」
「あ、うん、帰る」
せっかく、守屋くんと仲良くなれたのに、帰るのはもったいないと思った。
守屋くんが、学校に来てくれたら、そんなこと思わないんだろうけど、守屋くんは学校に行く気はなさそうに見える。
「・・学校、来ないの?」
機嫌が悪くなるのを、わかって聞いた。
だけど、守屋くんは何も答えてくれなかった。
「じゃあな」
それだけ言って、守屋くんは、私に背中を向けた。
遠くなっていく背中が、少し淋しそうに見えた。
「また明日ー!」
もう届かないことはわかっていたけど、守屋くんの淋しそうな背中に叫んだ。
なんの反応もなく、帰っていく姿を見て、私も淋しくなった。
夕焼け空と反対の空は、もう夜の顔を覗かせている。
「私も帰ろう・・」
ポツリと呟いた言葉は、風にさらわれ、空気になった。
きっと彼は、学校には来ない。
だから、いつかまた、守屋くんと会える時がくるといいな。
今日はたまたま、声をかけてくれたけど、それは守屋くんの、ただの気まぐれだったのかもしれない。