風便り〜大切なあなたへ〜
「俺・・・」
「大和ー!!」
守屋くんが、何か言いかけた時、遠くの方から声が聞こえた。
守屋くんを呼ぶ声だった。
一人の女の人が、こっちに向かって走ってきている。
同じ高校の制服を着た、ちょっとギャルっぽい人だった。
「大和こんなとこで、なにやってんのー?」
「なんだよ、悪いかよ」
守屋くんの知り合いっぽい人は、私を見て叫んだ。
「あー!まーた、女の子たぶらかして、泣かせたのー?かわいそうー!」
「え?」
「うっせーな。そんなんじゃねえよ」
守屋くんはそう言うと、また、じゃあなと言って私に背を向けた。
女の人は、守屋くんの後を追いかていった。
私は、また遠くなっていく背中を見つめながら、自分の心に、穴が開いたような気がした。
春なのに、冷たい風が、私だけに吹いた。
さっきまでの感情は、どこに行ってしまったのか、今は、淋しさだけ残った。
「彼女さんかな・・・」
呟いた声は、タンポポだけが聞いていた。
昨日と同じ空なのに、空がとても淋しく感じた。
「帰ろう・・・」
昨日と同じ場所で、昨日とは違う感情を抱いて、私は家までの道を、ゆっくり歩いて帰った。
空も、風も、周りの風景も、遠くから聞こえてくる音さえも、全部色あせて見えた。