嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
「んー……っ……!」


目を開ければキミの顔が目の前にあった。
気持ち良さそうに眠る彼を見て叫びそうだったのを必死で抑える。

彼に抱きしめられる様にして横たわる私。
下には青い寝袋が敷いてあって。
私たちを覆う様に赤い寝袋が被さっていた。

付き合っていない男女が抱きしめ合って寝るなんて。
世間ではとやかく言われるかもしれないけれど。

私とキミにとっては普通の事だったんだ。
でも、今は何故か胸が痛くて。
キミを見る度に鼓動が高鳴るんだ。
そんな気持ちを振り払いたくて視線をずらす。

腕時計を見れば9時を回っていた。
こんなにゆっくり眠れたのは久しぶりだった。
今までは5時とかにすぐ目覚めてたもん。
家にいたくなくて、誰かに会いたくなくて。
朝早くから家を飛び出して1人になろうとしていた。

でも今日は。
何でだろう。

キミが隣にいるからか。
ぐっすりと眠れたんだ。

いくらなんでも寝過ぎだ。
そう思ったけれどキミを起こそうとはしなかった。


「まあ、今日は学校も休みだし……。
ココにいても問題ないかー……」


今日は金曜日だけど。
11月3日は文化の日で毎年祝日だ。
学校はないし、もう少しここにいてもいいだろう。

そう思い私は再び目を閉じた。
キミの腕の中で。
< 171 / 336 >

この作品をシェア

pagetop