嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
私が再び目を覚ましたのはお昼を過ぎた頃で。
慌ててキミと飛び起きたんだ。

別に用事なんてないし。
元々、2人で過ごす予定だったから何の問題もないんだけど。

せっかくだからあの海に一緒に行きたかったんだ。
キミと過ごすならやっぱりあそこがいいかなって。


「……まあ、来ちゃったけどね」

「ん?」


大きく波を打つ海を見ながら苦笑いを浮かべた。
キミは不思議そうに私を見て首を傾げていた。


「ううん、ただ一緒にいられて幸せだなって」

「何それ。
まあ、俺も同じだけど」


キミはそう言って左手首にあるブレスレットを見つめた。
その顔は緩んでいて嬉しそうに見える。

気に入ってくれたんだ。
その事がすぐに分かる顔に私まで嬉しくなった。

キミにつられて私もネックレスへと視線を移す。
私にとっての宝物。
正輝にとってもそのブレスレットが宝物になってくれたらいいな。


「……あっ!」

「……あっ」


私と正輝の声が同時に響き渡った。
同時にキランと輝きだしたんだ。
ネックレスとブレスレットが。


「……俺さ」

「うん」

「こんなに幸せな誕生日は初めてかも」


キミが嬉しそうに笑うから。
私の胸はトクンと脈を打ったんだ。
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