嘘つきの世界で、たったひとつの希望。
キミと挑むテスト
「あー嫌だー」


やる気のなさそうな声が静かな空間に落された。
ネガティブな言葉は心まで暗くさせるんだ。
さっきから全くやる気が出ない。
と、言うより怖いんだ。
明日を迎えるのが。


「ウダウダ言ってないで勉強しなよ」


こんなに落ち込んでいるのに慰めの言葉の1つもかけないのは、勿論正輝だ。
私の隣で、カリカリと軽快にシャーペンを動かしていた。


「だってー……」

「だってじゃないよ。
明日からテストなんだから、もっとしゃんとしなよ」

「テストだからこんなに落ち込んでいるんじゃない!」


正輝の言う通り、明日からは地獄のテストが始まるんだ。
元気なんて出る訳がない。
只でさえ憂鬱なのに、お父さんとの約束まであるし。

学年順位10位以内とか、あり得ないでしょ。
大袈裟なほど肩を落とせば横からバシリと頭を叩かれた。


「さっさと勉強しなよ。
明日はアンタの苦手な英語もあるんだから」

「初日に英語とか嫌だー」

「嫌だって言っても仕方がないでしょ」


私の戯言なんて気にも留めずキミは勉強を続けていた。

放課後の2人だけの教室。
こうやって2人で勉強をするものすっかりと慣れた。
だって、勉強を教えて貰うようになってから、放課後は毎日こうして残って勉強をしていたから。

まあ、相変わらず授業はサボってばかりだからプラマイゼロかもしれないけれど。
苦笑いを浮かべていれば、再び頭に衝撃が走った。


「いい加減にしなよ?
ココが終わらないと家に帰れないと思って」


顔は笑顔なのに目が全く笑っていない正輝の顔。
ブルリと肩を揺らしてシャーペンを握る。


「や、やりますよ!!」

「うん」


あの笑みを浮かべる正輝ほど危険なものはない。
渋々と勉強を始める。
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