おためしシンデレラ
秘書の困惑


いたたまれない。

もう今すぐ消えてしまいたい。

常務は莉子とお見合い相手を会わせると、そのまま帰ってしまった。

京都の有名ホテルのティールーム、ガラスの向こうには水が流れる中庭が見え、お茶を飲みながらその美しさを堪能したいところだ。

莉子の向かいにはお見合い相手の田中さんだか中田さんだかが座っていて、隣には長い足を組み、唇の端を上げて楽しそうな三村。


「あの・・・・・隣の方は・・・・・?」


ですよね、気になりますよね。

莉子はしょうがないので紹介する。


「あの・・・・・わたしの働いている会社の代表取締役で三村です」


「よろしく」


三村が名刺を出して見合い相手に渡した。


「ああ、莉子さんは秘書をなさっているんですよね」



「はい」



「たまたまこのホテルに昨夜宿泊していまして、偶然これから見合いだという豆田に会ったので」


「はあ・・・・・心配でご一緒に?」


「僕は豆田を妹のように可愛がっていまして・・・・・豆田はとても優秀な秘書なんですが恋愛は全く疎いようで」

清々しいほど対外用の愛想笑いを三村が顔に貼り付けている。



妹のように可愛がって・・・・・?
初耳だ。


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