火曜日に、天使
僕は、肩掛けバックから紙の束を取り出した。

「ええっと…安田智明、彼は交通事故でなくなったんですね」

「はい。……信号も横断歩道もない道へ急に飛び出したそうです」

奈津子は痛みをこらえたように顔を歪めた。

「どうせ、酒に酔っていたんですよ」

突き放すような奈津子の言い草に、僕は小さな違和感を覚えた。
手に持つ紙をめくる。

「智明は、仕事が終わると家に直帰するような家族思いの男で、その穏やかな性格ゆえに会社の人間からも親しまれていた、と?」

僕の言葉を聞くにつれて奈津子は表情を緩めていった。


「一ヶ月前までは、です」

諦めたように奈津子は言った。


奈津子の話によると、智明は死ぬ一ヶ月前から毎日のように大量に酒をのみ深夜に帰宅するようになったという。
しかも家の金を持ち出しては全て使い果たし、家族にも冷たくあたるようになったらしい。

ただ、会社には行っていたようだ。
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