ただ、愛してる。
love1
昼下がりのある日。

私は街中でちょっと面倒くさい…いや、かなり面倒くさい男を相手していた。


「待てって!」

「ちょ、やだ!離して!」


捕まれた腕をぶんぶん振っても、離してくれる様子はなくて。
むしろさらにグッと力を込められる。


「そんなの納得いく訳ねぇだろ」

「だからそういうのが、面倒くさいのよ!」

「はぁ?お前、調子乗ってんじゃねぇよ」


男の手が宙を舞って、

殴られる…!

そう思いながら目を瞑った。


あ…れ?痛くない…

目を瞑って数秒。
恐らく殴られるだろうと予想した頬に痛みは感じなくて、そっと瞼を開けた。


「…っ」

「え?」


そこには宙を舞っていたはずの男の手が誰かに止められていて、男は顔を歪めていた。


「女に手なんて挙げるな」

「っ、何だよお前!つか、離せ」

「…行くぞ」

「え、あ、」


一瞬の出来事で、何が何だか分からないまま、私は謎の男に手を引かれてその場から離れた。

誰?助けて、くれた…?


「痛っ」

「え?」


私の声にパッと解放された私の腕。

見ると腕はほのかに赤くなっていて、さっきアイツに握られたからだと理解した。


「悪い、大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です。助けて下さってありがとうございました」

「…大きなお世話だと思うけど、さっきの彼氏?もっと男みる目養った方がいい」

「……え、」

「その様子だと同じようなこと、何度もあったんじゃないか?学習能力ってものを……悪い、初対面なのに言い過ぎた」


するとその人は私から離れて、どこかに行ってしまった。









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