恋する姫
イライラしてた?
ならオレが抱きしめてやるよ。
泣いてた?
ならオレな涙を拭いてやるよ。
だから笑っていて。
好きな人には笑っていてほしいんだ。
「あ、・・あのっ!!」
後ろから声が聞こえた。
「・・・柚季ちゃん」
全然気付かなかった。
「あの。大丈夫ですか?今、果物持ってきたんですけど・・・」
バスケットいっぱいに入った果物を見せて優しく笑った。
「ごめん。急いでいるんだ」
こんなところで時間を使えない。
聖羅ん家はめっちゃの前にあるのに。
「じゃあ、今度もう一度お伺い」
「ごめん。柚季ちゃん。君とはもう会わない」
柚季ちゃんの言葉を遮った。
「え・・・・??」
「ごめん」
柚季ちゃんの口が微かに動いたけど、オレは走り出した。