堕天使と呼ばれる女
その後、直行は全てを承知の上で、組織に属する事を決めた。

大切なさくらを、少しでも組織の実験台から回避する為にも、そして、さくらの命を少しでも長くする為に…


結婚式は、病院から遠く離れた教会で、2人だけで挙げた。
もしかしたら、それが形として残っている、唯一の幸せな記録かもしれない…


それから、直行は、どんなことでも率先してやった。

それが、例え悪いことであろうとも…

全ては家族を守る為に…


何かを守ろうとすればするほど、守りたいものは増えていった…

直行とさくらには娘が産まれ、そして、更なる命まで…

それも、全て組織の人間関係の中で。


直行の懸命な研究の結果、遺伝子の根本的な改変による、能力者の延命は困難であり、投薬による延命措置に切り替えるべきだという事が判明し、その事実を上層部に進言しようとした矢先、さくらは死んだ…


直行の懸命な努力は、間に合わなかった…


愛するものを守りたい一心で、後ろを向かず、必死で研究してきたのに、結果として、直行自身が愛するものに対して、何も残してはやれなかったのだ。


その時点で、直行に残されたのは、さくらとの間に産まれた娘が、命懸けでこの世に残した、孫娘のスミレだけだっだ。
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