堕天使と呼ばれる女


今度は、和也が生唾を飲む番だった。

聖羅の発言は、ものすごい強烈な意味を持つ…


無能力についての知識を持った人間全てが、その能力を得られるのならば、組織に太刀打ち出来る人間はもうこの世に存在しない。

そんな事になれば、地球全土が、実質上組織の所有化に堕ちる…。組織に媚びた者勝ちの、無法者の天下だ。


聖羅の眼光が、一際強く教授を睨んだその時、教授は重たい口を再び開いた。

「大丈夫じゃ。無能力化の力は、誰しもが使えるモノでは無い。」

「では、逆に詳しい内容は組織にとって喜ばしいモノでは無かった為、敢えて詳しい内容を隠す事で、自らを守る盾にしたと?」

そう語る聖羅の目からは、このカフェに来た時のような教授を慕う光が、すっかり失せているようにも見える。


「そうなるな…。聖羅には、悪い事をしたと思っておる。

 さっきも言ったが、当時のわしは、もう組織に媚びる必要は限りなくゼロに近かった。
 組織にとって、この情報は一見すると、非常に魅力的じゃ。しかし、わしにはそれをおいそれとくれてやる理由はどこにもない。



 幸いに、わしとスミレはその能力を使える事が判明した為、組織との交渉材料にさせてもらった。」

大枠の話は見えてきた。

しかし、未だに教授が何を目的としているかが見えてこない。

それなのに、相変わらずもったいぶった喋り方を変えない教授に対し、聖羅は苛立ちを隠せなくなってきた。


バンッ!!!!!!

「私を呼び出したのは、何が目的なんですか!?
 いい加減に、ハッキリと教えてください!!」

痺れを切らした聖羅は、そう叫ぶと同時に机を派手に叩いていた。

「落ち着けよ!!」

なだめる和也の声も、あまり効果が無い。

「だって、この人はどれだけ私の事を好き勝手してきたのよ!?
 私に優しく振舞ったのも、全部、自分のためじゃない!?
 今更もったいぶって何なの!?」

和也が聖羅を抑えようと出した腕を大きく振り払い、そう叫んだ。

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