堕天使と呼ばれる女

「「スミレさん!!

 笑いすぎですっ!!」」


やっぱり、ふたり揃って突っ込む姿に、スミレはお腹を抱えて笑っている。

祖父が亡くしたばかりのスミレが、笑い過ぎで苦しむ姿には、さすがの星羅と和也も、口をポカンと開けたまま凍りついてしまった。


「あぁ、ごめんね!

 私、おじいさまが亡くなったら、独りになるんだって、ずっと思ってたの。

 でも、違った…

 “それ”が何より嬉しいの…」


「「スミレさん…」」


スミレの言葉に絶句した“ふたりの台詞”も、やっぱり見事に被った。


…がるるる…

睨み合うふたりからは、まるでそんな声が聞こえてきそうだ…


「星羅ちゃん?」

「あっ!…はい…」

スミレに、突然声を掛けられた星羅は、犬と化していた自分に気付いて、慌てて取り繕うとした。

…が、当然、逆効果。
さも当たり前のように、噛みついてくるバカが居た。


「ぶっ!!…何を…
 今更ぶりっこしてるんだよ~。」

「だっ、誰がぶりっこしてるっていうのよ!」

「まあまあ。」


『あぁ…この子たち、ふたりとも素直じゃないのねぇ…』

2匹の子犬をなだめるかの如く、ふたりを軽く諫めつつ、スミレは苦笑いをしていた…

『おじいさまより、手のかかる子たちね…
 まるで新たな家族が出来たみたい。』

スミレの胸に、大きくドカンと空く予定だった空洞は、空く暇も無く、面白い子たちがあっという間に埋めてしまった。

見ていて飽きない、コロコロと変わる表情と、優劣がつくことの無い押し問答…

スミレの涙も、いつの間にかすっかり引っ込んでいた。


『おじいさまの言ってた星羅ちゃんの“人柄”って、こういう事だったのかも…』

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